子どもが大きくなるにつれて、家の中でゆっくり会話をする時間が減ったように感じていませんか?特に小学校高学年になると、自分一人の時間を大切にするようになり、幼い頃のような「読み聞かせ」の機会も自然と少なくなっていくものです。
けれど、大人でも思わず息を呑むような芸術性の高い絵本なら、親子で一緒に驚き、楽しむ「静かな時間」を再び作ることができます。今回は、そんなひとときにぴったりの一冊をご紹介します。
1. 最後まで読んだら「さかさま」に。二度楽しめる魔法の構成
アン・ジョナス作の『光の旅かげの旅』は、一見するとモノトーンで描かれた静かな旅の絵本です。夜明けから夜更けまで、光と影が織りなす風景の中を進んでいきます。しかし、最後のページに辿り着いたとき、この本の本当の仕掛けが現れます。
「本をさかさまにしてごらん!」
指示通りに本を180度回転させると、今まで見てきた白と黒の風景が、全く別の物語へと生まれ変わります。さっきまで空だと思っていた部分が海になり、木の影だと思っていた部分が建物になる。その驚きは、理屈抜きの感動を呼び起こします。
2. 高学年の子にこそ「読み聞かせ」が効く理由
実際に、私の小学校6年生の娘にこの本を読み聞かせてみたところ、1ページめくるごとに「へ~!」「すご~い!」と驚きの声を上げていました。
- 視点の変化を体験できる: 「物事は見方を変えれば違って見える」という、思春期に差し掛かる時期に大切なメッセージを、直感的に伝えてくれます。
- 余白のある美しい文章: 幻想的な絵に寄り添う静かな文章は、騒がしい日常を忘れさせ、心を落ち着かせてくれます。
- 親子の「ときめき」を共有: 知識を教える本ではなく、純粋に「驚き」を共有することで、照れくささのある年齢の子とも自然にコミュニケーションが取れます。
3. 眠りにつく前の、短い「心のケア」として
忙しい一日の終わり。ほんの10分だけでも照明を少し落とし、親子でこの絵本を開いてみてください。白と黒の静寂な世界に没頭することで、高ぶっていた神経がスッと落ち着き、質の良い眠りへと誘われます。
大きな声で元気に読むのとはまた違う、静かで幻想的な読み聞かせの時間は、成長した子どもにとっても、そして親にとっても、自分を取り戻す大切な儀式になるはずです。
今回ご紹介した絵本:『光の旅かげの旅』
(作・絵:アン・ジョナス、訳:内海 まお、出版社:評論社)